【マレーシア・インド系】セルベンドレンにインタビュー2
- 2020.11.06
- マレーシアで生活
【補足】こちらは2018年に大学の友達にインタビューしたときの記事です。
セルベンドレンに2度目のインタビューです。今回は、よりマレーシアの内部に密着してインタビューしてきました。
もし日本に他に2つの人種がいるとしたら、どんな生活を思い浮かべますか?
お互いに争いなく共生できるのか分からない、というのが、ぼくの正直な感想です。
マレーシアでは実際に人種の混ざり合った生活が実現しています。それも、アメリカの「サラダボウル」ように人種と文化が混ざり合っているわけではないんです。
じゃあどうやって生活しているのか。そこのところについて、直撃してきました。
国のライフスタイルがグッと変わった
ゆうむ:セルベンドレンが子供の頃から、これまでにマレーシアはどんな風に変わって来た?
セルベン:まずは、子供の頃に比べて日常生活で使うものの物価が上昇した。もちろん、ぼくはクアラルンプールという首都に住んでるから田舎に比べたら高いし。
ゆうむ:だいたい物価はどれくらい上がったの?
セルベン:子供の頃に比べて2、3倍になったかな。正直、子どもの頃だから、あんまり覚えてないけど。ニュース記事とかを読んでみたら、それくらいだよ。
でも、それと同時に、学校で勉強する機会や仕事の機会も増えたよ。身近な仕事についていえば、例えばタクシーやバス。昔はこの2つしかなかったけど、今は、LRTやMRTという電車が作られて、ずいぶんと移動が楽になった。
それに、Grabという一般人が運転するタクシーで安く移動することもできるようになって、ライフスタイルが大きく変わったね。
ゆうむ:マレーシアでは、車の渋滞が毎日、朝昼晩に必ず起こってるよね。道路にズラーッと30台とか車が並んでて。あれには正直びっくりした。それを考えると、電車ができたことでかなり移動しやすくなったと思う。
政治に望むマレーシアの底上げ
ゆうむ:マレーシアの政治についてどう思う?
セルベン:マレーシアは60年前くらいに独立して、これまで1度も政権交代したことが無かったんだけど、今年(2017年)の5月に初めて政権交代が起こった。
ゆうむ:マレーシア中が盛り上がってたよね。選挙のときは何が起こるか分からないから、大学もずっと休みになったし。
セルベン:新しい時代が始まった瞬間だったからね。
長い間、汚職など政治的に望ましくないことがあったけど、今後はいろんなことが変わるだろうと思う。テクノロジーやマネジメント、経済、国民の生活とかいろいろな観点から、マレーシアに良くなって欲しい。
実際に新しい政党になってから、新しい取り組みが始められていて、マレーシアは良くなっていくと思うよ。今はまだどうなるのかはっきりとは分からないけど、2年後には、そうした取り組みの結果が分かるはず。
ゆうむ:マレーシア国民みんなが望んでることだもんね。ぼくも良くなって欲しい。セルベンドレンは、新しい政府はどんな将来を作ってくれると思う?
セルベン:教育の質をもっと向上させて、授業料が無料になるのを望んでる。
先進国の中には大学レベルの教育にまで金銭的サポートをしてくれるところがある。マレーシアには、石油や天然ガスなどの資源が豊富にあるけど、ドバイは石油しかない上に、最近は採掘もほとんどできていない。それでも、ものすごく発展してる。
それに比べてマレーシアはそんなに発展してるわけじゃない。マレーシアも教育の質が上がれば、国民全体でマレーシアの発展が加速するはず。
ゆうむ:マレーシアの発展には、質の高い教育は不可欠、か。
セルベン:あとは、マレーシアからホームレスがいなくなって欲しい。
ゆうむ:まだ駅や橋の近くにいるよね…。
セルベン:そう、だから誰もが最低限の生活を送れるように、職について、給料ももらえるようになって欲しい。
他には、ぼくはメカトロニクスを勉強しているわけだけど、マレーシアではロボティクスの分野が発達していないから、もっと発達して欲しいなあ。
文化の混ざり合いこそがマレーシア
ゆうむ:マレーシアのことは好き?
セルベン:もちろん。マレーシア国民だからね。
他にも、マレーシアは外国とは違って、たくさんの種族がいるし、宗教があるから、どこにいっても新鮮に感じる。
1つの国ではだいたい特定の文化を見れるけど、マレーシアに来れば、街中を見て回ったり、人に話しかけたりするだけで、様々な文化を知り、感じることができる。
また、異なる人種の混ざり合ったマレーシア人がお互いに協力して一緒に住んでるのは誇らしいよ。
あとは、マレーシアは文化や宗教のお祭りがたくさんあって休日が多いっていうのもあるかな(笑)。
「阿吽の境界」はマレーシア人に必要不可欠
ゆうむ:マレーシアでは、それぞれの人種によって、食や服装、お祭りまで違うライフスタイルを過ごしてるけど、それについてはどう思う?
セルベン:それはそのままであるべきだと思う。
みんなマレーシア人でそうあることに誇りももっているけど、それでも人種としてのアイデンティティーは必要。
インド系はインド人だし、中国系は中国人。もし、ぼくらの文化が混ざり過ぎたら、特有の文化もアイデンティティーも失われてしまう。
だからこの点については、境界が必要。そうやって、それぞれの文化を守っていける。マレーシア人はマレーシア人であると同時に、自分の文化も他の文化も同時に尊重し合って生活しているんだ。
1番繰り返したくない過去「人種の大移動」
ゆうむ:何かマレーシアで改善したいことはある?
セルベン:人種間の問題だね。
マレーシアには人種がたくさんいるから、人種間での争いが起こりやすい。そして、それが原因でマレーシアの経済発展が遅れてしまってる。これがマレーシアの1つの弱点でもある。
ゆうむ:これまでそうした問題は多かったの?
セルベン:たびたび起こってるよ。天気に例えれば、年に1度は梅雨の時期があるみたいに。ニュースを見れば、人種間での衝突が数年に1、2回起こってるのが分かるよ。
ぼくは、将来には、この問題が無くなって欲しいと思ってる。だれもお互いを罵りあったりしない社会がいい。
ゆうむ:言いづらかったら言わなくていいけど、どんな問題が起こったの?
セルベン:2、30年前の話になるけど、国が独立した後にマレーシアの主な3種族がそれぞれが衝突して、騒動が起こった。それこそ、消耗しかしなくて何も生み出さないから、政府は二度と同じことを繰り返したくないと思ってる。
実は、騒動の前は、もっと多くのインド系の人たちがマレーシアにいた。でも騒動の後に、たくさんの人たちがインドに帰っていった。中国系の人たちも同じ。
理由は単純に、また同じような騒動が繰り返されるんじゃないかと恐れたから。そうして、インド系と中国系の人数はかなり減ってしまったんだ。
ゆうむ:元の国に帰っちゃったんだ。
セルベン:今は普通に戻って、その問題以降、政府はこうした騒動が起こらないようにしてるし、マレーシア人は人種間の問題については、あんまり話したいとは思わない。この騒動がこれまでで1番大きなものだったから。
ゆうむ:どうやったらこの問題が解決できると思う?
セルベン:こうした繊細な問題について話さないこと。これは国民みんなそうあるべきだと思うし、政府も同じ。二度と過去と同じ誤ちを繰り返さないように。
そうして、今後は、マレーシア国民それぞれがどうやって国を発展させられるか考える必要がある。
多言語国家マレーシアで言語を学ぶには意味がある
ゆうむ:他の言語の勉強は簡単だと思う?
というのも、日本人は日本人同士では、日本語しか使わないし、日本語があれば十分。でもマレーシアは違うんだよね。
マレーシア人はたくさんの言語を使える。学校でマレー語と英語は必ず勉強して、それ以外にも人種に応じて中国語かタミル語も家族と一緒に話したりする。だから言語に対する価値観が違うんじゃないかと思って。
セルベン:それは、マレーシアには環境がそろってるからだよ。
笑顔が眩しい…
ゆうむ:なるほど。
セルベン:言語の勉強の簡単な方法は、その言語を話せたり、使えたりする人と一緒に話をすること。ぼくらは自分たちの家で学べるし、マレー語や中国語もマレーシアで勉強するのはすごく簡単。その言語を話す人たちがいるから。
でも日本では、他の言語を話す人を探すのがとても難しい。例えば、日本でタミル語を話す人を探すのは難しいでしょ?でもマレーシアでは、タミル語を話す人がいるから、タミル語を習得しやすい。
マレーシアにも日本人がいるから日本語を勉強することもできるけど、人数の関係もあって、中国語やタミル語に比べたら難しい。
言語を簡単に習得するには、その言語を勉強できる環境に身を置くことが1番。
ゆうむ:確かに、外国に来たら、その国の言葉を使うしかないね。
セルベン:学びたい言語を使う環境がなかったら、コミュニケーションができないから、マレーシア人のように複数の言語を使えるようになるのは難しいよ。
マレーシアで生活するのに英語はとても重要だし、自分の種族の言語はアイデンティティーや文化を維持するのに必要。マレー語については、国語だから勉強する必要がある。
だから、どこに重きを置いているのかで言語を勉強する理由は違う。
ゆうむ:そうしてマレーシア人は、多言語を日常生活で普通に話せるようになるんだね。
人種による社会問題を考えるとき、数字マジックには注意
ゆうむ:マレーシアではインド系の人たちがよく問題を起こすって記事で読んだんだけど、それについてはどう?
セルベン:確かにインド系の人は多いかもしれない。でも、それは人種の割合にも関係してる。
つまり、それぞれの人種の中で問題を起こす人の割合を調べたら、インド人が問題を起こす割合は高いかもしれない。でも、マレーシアで1番人数の多いマレー系に比べたら中国系とインド系はとても少ない。
ゆうむ:相対的に見たらってことか。
セルベン:そう。例えば、インド系の人が問題を起こす割合が10%だとする。そしてマレー系の人が1%だとしたら、一見、インド系の人の方が問題を起こしているようだけど、人数で比べたらマレー系の方が多いということになる。
だからこうした調査ではインド系の人が1番問題を起こしやすいということにはなるんだけど、人数で比べたらとても少ない。最近は、問題が起こることも少なくなってきたし、将来的にはもっと少なくなって欲しいと思ってるよ。
人種の間に境界はあっても、壁はない
ゆうむ:インド系の人は、マレー系と中国系の人たちに対してどういう風に思ってる?
セルベン:ご近所さまかな。
ゆうむ:ご近所さま?
セルベン:これは、ぼくの意見だけど、もし同じ地域に住んでたら、その人たちは近所の人たちでしょ?それは国レベルでも同じで、他の人種の人たちは近所の人たちという感覚。
ぼくらは1人で住んでるわけじゃなくて、近所の人たちと一緒にいる。それが他の人種でも。
職場に行けば、違う人種の人と会うし、事務所でも病院でも、大学の講師だっていろんな人種がいる。
それに、マレーシアが独立したときには3つの種族が協力してイギリスに交渉した。だから、3つの種族の結束が国の成長にとって、とても大切なことでもあるんだ。
ゆうむ:一般的な意見としては、インド系の人は他の人種をどう思ってる?
セルベン:やっぱりご近所さまかな。
学校に行けば、どのインド系の人も1人は中国系の友達がいるし、マレーシアに住んでる限りは、だれでも他の人種の友達がいる。
ゆうむ:なるほど。じゃあ、大人の人たちはどう?子どもだったら学校で違う人種の人に会っても、違う人種なんて気にしないはずだし。
セルベン:大人も同じことだよ。学校だと友達、職場では同僚になる。政府でも、いろんな人種の人が一緒に政治的活動を行ってるし、どんな職場でも他の人種と仕事をするという環境にある。病院の医者もいろんな人種がいる。
友達じゃなくても、お互いにフレンドリーに接する。それが日常生活を送る上で大切だから。確かに他の人種を罵る人はいるけど、少なくなってきてる。同じ人種の間でも争いは起こりうることだし、それと比べても大きな差は無いと思う。
おわりに
マレーシアという国の中にある多様性。
一見すると、外国人にとっては、いろいろな文化を体験することができるメリットがあるにしても、国民にとってはこれまでの歴史で大変な苦労をしてきたんだと感じました。
しかし、その一方で、2017年には政治のあり方が歴史的に大きく変わりました。今後、マレーシアが大きく発展していくのを楽しみに思います。
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