【マレーシア・マレー系】アマリアにインタビュー
- 2020.11.05
- マレーシアで生活
【補足】こちらは2018年に大学の友達にインタビューしたときの記事です。
今回の外国人インタビューでは、マレー系マレーシア人のAmalia(アマリア)が登場します。
スタートは、大学のある国マレーシアからいきます。この異文化豊かな国で共生している3つの人種それぞれにインタビューしていきます。
「マレーシアといったら…?」
ぼくの友達にマレーシアに留学する話をしたら、こんな反応が帰ってきました。さらには、シンガポールと間違えられてしまうほど、まだ日本人には知名度が低いです。
正直なところ、ぼくもマレーシアについては留学先候補の1つでしたし、ジャングルが広がっていて、その中に大学があるようなイメージしかありませんでした。
しかし、日本人には10年以上連続で長期滞在したい国No.1に選ばれ続け、多様な人種がそれぞれの文化を持ちながら生活している様は、ぼくの価値観を見事にひっくり返しました。
そんな国で最も人数の多いマレー系のアマリアに、マレーシアの生活と日本について突撃取材してきました。
マレーシアの教育は種族でバラバラ
ゆうむ:マレーシアでの学校教育について、アマリアはどうだったの?
アマリア:私は中国の幼稚園に行ったよ。だから中国語(マンダリン)も少し話せる。それから小学校は“Sekolah Kebangsaan”っていう、どの種族の人でも行ける学校に行った。
ゆうむ:セ、セコラ…?
アマリア:セコラ・ケバンサン。
マレーシアの学校には3種類あって、中国の学校、インドの学校とセコラ・ケバンサンがある。どの人種でも3つの学校に行くことはできるんだけど、中国の学校ではほとんどが中国人。
そしてインドの学校はインド人が大半で、インド人の言葉(タミル語)も勉強する。
セコラ・ケバンサンでは、ほとんどマレー人が勉強してて、学校ではマレー語を話してた。
ゆうむ:そんなにバラバラなんだ。スゴい。
アマリア:そう。でもどの種族でも入学できるのが、セコラ・ケバンサン。他の2つの学校はそれぞれの種族のための学校っていった方が正しいかな。
小学校を卒業したら、そのまま中等学校(日本の中学校・高校)に行ってこの大学に来たよ。
ちなみに、中等学校を卒業するときには「SPM」っていう試験があって、多くの人が17歳の時に受験して卒業する。
でも、私の学校では「O level」っていう別の試験があって
ゆうむ:「O level」?
アマリア:「O level」は、合格すれば大学に進学できる資格がもらえる試験のこと。
私は16歳の時に受験したから、17歳から大学が始まって、基礎コースから始めたよ。
ゆうむ:え、じゃあ、17歳で始まって、今は18歳なの!?
アマリア:違う違う。今は19歳!大学3年目だから!
ゆうむ:あ、そうか。17歳から大学生ってなんか新鮮だなあ。
学校では給食がない?
ゆうむ:学校のお昼ご飯はどうしてたの?日本は給食があるけど。
アマリア:カフェテリアで食べてたよ。
ゆうむ:買って食べてたんだ!それはいつからだったの?小学校から?
アマリア:小学校からだね。生徒にとってお手軽な料理が買えるよ。
例えば、ナシレマとかナシゴレンとか、マレーシアの家庭でも作れそうなもの。
もちろん家からお弁当を持って来ても大丈夫。
ゆうむ:食べ物の種類はどのくらい?ロティチャナイも食べられるの?
アマリア:ロティチャナイは買えないけど、種類は少なかったかな。学校側としては、両親にお昼ご飯を作るのを勧めてたから。
でも私の両親は忙しくて料理をする時間が無かったから、代わりにカフェテリアで食べてた。
毎日ナシゴレンとか食べてたなあ。小学校1年生からだから、7歳からだ。
ゆうむ:7歳から…お弁当のときは、中身はどんなものだったの?
アマリア:お弁当も、ナシゴレンとかサンドイッチとかかな。とにかくシンプルなのだった。
ゆうむ:それを聞くと、日本の給食って恵まれてるなあ。
種類も豊富だし、栄養バランスも考えられてるし、子どもが自分たちで買いに行く必要もないし。
マレーシアの宗教教育はごちゃまぜ?
ゆうむ:学校で学ぶ科目は日本と同じかな?
アマリア:えーと…マレー語に英語、理科、算数、社会…とか、日本と同じだね。英語はマレーシアの共通言語だから、小学校から勉強してた。
それと、スポーツや宗教教育もあったよ。
ゆうむ:日本でいう「道徳」だね。
アマリア:マレーシアはイスラム教国家。私も含めてマレー系マレーシア人はイスラム教徒(ムスリム)だからイスラム教の教えを勉強する。
それ以外の生徒たちは道徳を勉強してた。
道徳は、いろんな宗教の教えをベースにしているから、イスラム教に限らず他の宗教の教えも教わるよ。
ゆうむ:ごちゃまぜかあ。授業では宗教の「バイブル」を直接使うの?
アマリア:ううん、テキストがあって、イスラム教でいえばコーランを参考に作られてた。
生徒一人ひとりが生き物を育てる
アマリア:「ライフスキル」の授業もあったよ。
ゆうむ:ライフスキル…?なんだか突然サバイバルな雰囲気になってきたけど…
アマリア:ううん、サバイバルじゃなくて、棚を作ったり、編み物をしたりとか。
ゆうむ:ああ、図工とか技術、家庭科が合体したもののことか。
アマリア:そう。その中には動物を育てる課題もあって
ゆうむ:動物!?鳥とかウサギとか?
アマリア:うん。でも、ほとんどみんな魚を学校に持ってきて育ててたよ。魚は熱帯魚で育てるのが簡単だから。生徒が面倒をみる生き物は、そのための部屋に置かれていて、部屋中が魚でいっぱいだったなあ。
あと、ウサギみたいな動物を育ててもいいよ。でも、ケージを使うし、大きくなると育てるのが大変だし、なによりお金がかかるから、飼う人はいなかった。
ゆうむ:あえて聞いてみるけど、犬も飼えるの?
アマリア:犬!?さすがに犬は育てられないと思う。笑
それに基本的に、ムスリムは犬に触れないからダメ。実際は触ってもいいんだけど、触った後には水と混ぜた土を使って洗わないといけない。
ゆうむ:そうだったね。土と水で洗うって、すごいユニークだなあ。ぼくも犬に触ったら手は洗うけどね。笑
中等学校3年生の試験は大学のレポートレベル
ゆうむ:中等学校ではやっぱりたくさん勉強するの?日本のように大学受験はないけど。
アマリア:3年生と5年生の時に、それぞれ試験がある。
3年生の時の試験は「PT3」っていって、下級生から上級生に上がるときの試験。5年生の時の試験は「SPM」という記述式試験だけで、これを受けたら卒業して大学に行けるんだ。
「PT3」はもともと「PMR」っていう記述式の試験だったんだけど、「PT3」にはコースワークっていう課題がある。
ゆうむ:課題…
アマリア:生徒一人ひとりがマレーシアについて調査するの。
それに課題だけじゃなくて、記述式の試験もある。でも記述式は課題があることを考えられて、そんなに多い量じゃない。
ゆうむ:日本で言えば、中学3年生でそんなことをするんだ…大学みたいでスゴいね。日本じゃ考えられない。どんな課題なの?
アマリア:例えば、マレーシアの交通状態についての調査。バス停の状態はいいか、バスはどのくらいの頻度で来るのか、とか。そんなに複雑じゃなくてシンプルな質問。
それらについて、近所の人に聞いてみて意見をもらうの。聞き取り調査が終わったら、それに基づいて自分の考察や結論をまとめるよ。
ゆうむ:へえ…本格的なレポートだ。
アマリア:うん、そして課題の期間はだいたい1ヶ月。
ゆうむ:1ヶ月も!
アマリア:そう。でも調査自体は2週間くらいで終わるよ。ちょうど私の年から始まったから新しいことばかりで、正直、結構大変だったなあ。笑
マレー系の人は他の人種についてどう思ってる?
ゆうむ:マレーシアには3つの人種がいるけど、ぶっちゃけマレー系の人たちは中国系、インド系の人たちについてどう思ってるの?
アマリア:うーん。私の意見としては、他の人種の人たちのことは全然気にしてないよ。生まれたときから、他の種族の人たちはマレーシアにいたから。
ゆうむ:確かに生まれたときから、みんな一緒の国にいたら気にならないよね。
でも、一般的なマレー系の人たちの考えはどう?
アマリア:ほとんどの人がお互いに受け入れてきてるよ。みんな一緒に住んでる人たちだからね。
それでもまだ人種差別をしてる人たちがいることも事実。
ゆうむ:…それはどんなのか聞いてもいい?
アマリア:うん。その人たちの他の人種の人たちに対して「ここは自分たちの国だ、ここで何してるんだ」っていう考えなんだ。
実際に、「中国人は中国に帰れ!」って言う人たちもいる。
ゆうむ:それはひどい…。どのくらいの年代の人たちが言うの?
アマリア:それが、どの年齢の人たちでも言う人を見かけるよ。大人だけじゃなく子どもたちも含めて。
なんでかというと、両親が子どもたちにそういう教育をするから、子供たちも他の人種に対して悪いイメージを持ってしまうんだ。
ゆうむ:そうやって悪循環になってしまうのか…。でもマレー系で人種差別をしている人たちの割合は少ないんだよね?
アマリア:過半数以上の人たちは、もう他の人種の人たちを受け入れてきてるから、いい流れができてきてるんだけど。
でも、政治的に見てもまだ受け入れてられていない部分がある。
ゆうむ:というと?
アマリア:私は政治でも他の人種が参加できるようにするべきだと思う。
でも政治に関わっている人たちのほとんどが、まだマレー系の人たちなんだ。
彼らは、マレーシアはいろんな人種の人たちが共存していこうと言ってる。なのに、まだ政治に参加できる人たちはマレー系の人たちばかり。
政治が変わらない限り、それぞれの人種がお互いにマレーシアで共存し合うのはまだ実現してない。
ゆうむ:政治かあ…
アマリア:でも今年行われた選挙でマレーシア初の政権交代が起こったおかげで、新しい政治体制になって他の人種の政治家も増えたよ。
発足したばかりだから、実際に機能しているかどうかまだ分からないけど、これで確実に1歩進んだとは思う。
ゆうむ:政権交代でマハティール氏が93歳で再び首相になったのは世界的にも大きなニュースになったね。
アマリア:そうそう。
確かに、最初、マレーシアに他の国の人たち、中国人とかインド人が来たときには「何この人たち?」ってなったはず。
けど、それはもう50、60年前のこと。だから、もうほとんどの人たちが受け入れてきてる一方で、まだ差別の雰囲気は残ってる。
この人種差別をなくすには、やっぱりみんなで一緒に協力する意識が大切。
これから国民の中でも政治的にも、良くなってくれたら嬉しいなあ。
マレーシア人はマレーシアが好き?
ゆうむ:アマリアはマレーシアのこと好き?
アマリア:好きだよ。自分の国だもん。
ゆうむ:そうだよね。マレーシア人も同じように考えてるかな?
アマリア:みんな好きだと思う。
結構、マレーシア人はマレーシアに対して文句を言うことが多いけどね。笑
例えば、マレーシアはいつも暑いとか渋滞がひどいとか。でもそれも愛情の裏返しで、不満を言いながら、なんだかんだ言ってみんな好きだよ。
その証拠に2018年の総選挙の投票率は82.3%だったし、その前回の2013年には84.8%だった。
ゆうむ:それはすごいね。みんなマレーシアにもっと良くなって欲しいって思ってるからこそ政治への関心も高いんだろうね。
日本のイメージは”パーフェクト”
ゆうむ:アマリアの日本のイメージってどんなの?
アマリア:日本はすごい”パーフェクト”なイメージ!
今日イチの笑顔
ゆうむ:パーフェクト?
アマリア:そう!もしマレーシアからどこか他の国に行くんだったら日本に行きたい。
日本人はすごい親切だし。例えば、この前、日本に行った時に駅で声をかけてくれる人がいたんだ。
「何かお困りですか?」って!
ゆうむ:そうなんだ。それはどこで?
アマリア:静岡の富士宮に行ったとき。
その時は、家族と一緒に行ったんだけど、駅でどこに行けばいいのかが分からなくなって困ってたら、一般の日本人の人たちがこっちに来て、どんな風に行けばいいのか教えてくれたんだ。
ゆうむ:へえ!その人たちは英語を話して案内してくれたの?
アマリア:そう。「Where?」とかそれぐらいの簡単な英語だったんだけど、地図で場所を教えてくれたり、標識の見方を教えてくれたりして、すごく親切な人たちだなあって思った。
ゆうむ:それを聞くと、ぼくも嬉しいなあ。
アマリア:それと日本のゴミ収集のシステムが好きだよ。
ゆうむ:え、ゴミ収集のシステム?
アマリア:そう!日本人はゴミをそれぞれの種類によって、ちゃんと分別してるのがスゴい。
少し前に日本のドキュメンタリーを見たときに、番組で臭いにおいが全然しない清掃工場が紹介されててビックリした。
マレーシアだとゴミ収集車が走った後に、何十メートルも臭いにおいが残ってて嫌な気分になる。
ましてや、清掃工場に行くと本当に臭くて、口を覆ってしまうくらい。でも日本では驚くほど臭くないってレポーターが言ってた。
ゆうむ:そうか。言いたくないけど、マレーシアだとまだゴミの分別はしっかりされてなくて、グチャグチャだもんね。
アマリア:あとは、日本のアニメも日本の文化がよく分かって好き。
例えば「君の名は。」を見て、学校の制服とかアルバイトとかお祭りとか、「日本の生活ってこんな感じなんだ!」ってイメージできた。
それにYouTubeでも日本人の動画は面白いよね!
私が最近見た動画は、「SUSHI RAMEN【Riku】」っていうYouTuberのなんだけど、日本人はクレイジーな面白い企画を考えるなあって思いながら見てた。笑
ゆうむ:すごい。いろんなところから日本のことを知ってるんだね。
日本人のココが心配
ゆうむ:ちなみに、何か日本についてネガティブなイメージってある?
アマリア:さっき日本のイメージは”パーフェクト”って言ったけど、そのせいで現代の日本人はたくさんのストレスやプレッシャーを感じて生活してるんじゃないかなって思う。
例えば自分たちは、勉強でも仕事でも、いろいろなところで完璧じゃないといけないって考えていたりとか。
そうして、たくさんの人が精神的に問題を抱えてしまってるんじゃないかなって心配。
ゆうむ:確かに現代の日本人の生活はストレスが多いイメージが強いね。
アマリア:ちょっと前にTwitterを見てても、1人の日本人がうつ病について書いてて、その投稿にたくさんの日本人がコメントしてた。
それで日本人の多くが同じように考えていることが分かったよ。
勉強や仕事でたくさんのことができてる日本人はやっぱりスゴい。でもストレスとのバランスも取れたらいいのにな、とも思う。
おわりに
マレーシアの教育は、国の人種が混ざり合っていることもあって、学校が種族ごとに分けられています。その上、中国系の学校でマレー系の生徒が学ぶというように混ざり合っているため、人によってバックグラウンドが違うということが起こっていてユニークですね。
マレーシア人の履歴書には、それぞれに全く違う人生がありそうで見てみたくなりました。
人種の問題は、日本ではほとんど考えることがありませんが、こうして話を聞くと考えさせられますね。最近は争いも収まってきているようなので、このまま問題が起こらないことを願います。
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